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弊社検査への検体輸送方法は冷蔵, 常温の2パターンがあります。
実は、正確な検査結果を出すためには冷蔵輸送が奨励されています。
「冷蔵輸送が奨励なら常温輸送はなぜやっているの?」という疑問が生じますよね😅
今回の記事では以下について説明していきます。
(1)冷蔵輸送が奨励される理由
(2)常温輸送できるのはどんな検体?
(3)常温輸送を受け付ける理由
弊社検査の歴史や、細菌検査にかける願いなど熱い🔥記事になっておりますので、是非最後まで読んでくださいね♪
(1)冷蔵輸送が奨励される理由
細菌検査で最も正確な検査結果が出る方法は、検体採取後速やかに培養を始めることです。しかし、多くの動物病院は併設の検査施設を持たないため、検体を保管→輸送する必要があります。この際、注意するポイントは以下の通りです。
・弱い菌(嫌気性菌など)の死滅・分離漏れを防ぐ
・強い菌(雑菌など)の過増殖を防ぐ
要は強い菌が増殖しすぎると弱い菌が負けてしまうんです…!!ですから、なるべく細菌数が増減しない冷蔵条件を保つことが重要になってきます。
弊社検査で扱う全ての検体は冷蔵保存・輸送が原則となっています。(例外として、血液, 髄液や淋菌感染が疑われる場合は常温が奨励されますが、弊社検査ではいずれも対象外です。)
※ちなみにですが、乾燥検体も奨励されません!!細菌は基本的に乾燥条件に弱いので、綿棒やマイクロブラシをスピッツ管にそのまま送って頂いても検出率はとても低いのです…。培地ありのスワブで直接採取するか、培地ありスワブの綿球部分に検体をこすりつけてお送り下さい。
(2)常温輸送できるのはどんな検体?
「上に全ての検体が原則冷蔵って書いてるやんけ…😡」と思った方!正解です(笑)
でも、ある特定の検体だけは(奨励されないけども)常温で送っても原理的に検出可能なんです。
その検体は…『犬の表在性膿皮症』のみ!です。
前回の記事でも触れたのですが、犬の表在性膿皮症の90%以上はブドウ球菌(Staphylococcus属)によって引き起こされます。またブドウ球菌は乾燥や脂肪酸等細菌を弱らせる条件に強い菌です。したがって、ブドウ球菌が高確率で検出される部位×ブドウ球菌は死ににくい=常温で輸送可能というわけです。
(3)常温輸送を受け付ける理由
奨励されない常温輸送をなぜ受け付けているのか、それにはまず弊社検査の成り立ちを説明する必要があります。
どうぶつの細菌検査は初め、『皮膚細菌検査』からスタートしました。当時は「皮膚疾患では死なないので治療を後回し」「検査費用が高いので検査しないで薬を処方」といった臨床現場の状況がある一方で、本邦における薬剤耐性菌は急速に増加していました。このままでは未来の動物たちは耐性菌で助からないかもしれない…そんな状況でした。そこで『適正価格で質の高い検査を』と始まったのが『どうぶつの細菌検査』です。とにかく価格にこだわり、封筒(料金後納郵便)を使って常温で輸送すれば、¥3000(お手軽検査/税抜)から検査ができるようにしました。
その後お陰様で皆様にご愛顧頂き、検査可能部位が耳・尿その他・眼と拡大しましたが、皮膚細菌検査(犬/表在性に限る)だけは名残で常温輸送を可能としております。もし料金のことでお悩みの飼い主さんがいらっしゃいましたら、常温輸送をご検討頂けましたらと思います。
どうぶつの細菌検査は未来のどうぶつも救いたい、そんな願いを込めて今後も検査のハードルを低くする努力を続けて参ります。
参考文献