医療施設で検出された細菌種ごとの抗菌薬の感受性率を表にまとめたもの。
院内での迅速な感染症治療と耐性菌対策に不可欠なツールとして注目されている。
抗菌薬選択の手がかりになる
細菌検査結果が出る前に治療を始める際
(エンピリックセラピー)の抗菌薬選択に役立つ。
薬剤耐性菌の動向チェック
耐性菌の封じ込めがうまくいっているか、
抗菌薬は適正に使用されているかの指標となる。
感染臓器・患者背景・
グラム染色等の情報を
組み合わせて原因菌を想定
表から原因菌の
感受性率を予測
適切な抗菌薬を選択
※経験的投与の際は、最低80%以上の
感受性率を推奨(臓器や重症度によっては90〜100%が必要)
ここからは僕たちと一緒に、実際にアンチバイオグラムを使ってみよう!
臨床でよく見る症例を想定しながら練習していくよ!
ケース1
犬の皮膚感染部位を顕微鏡で見たら、こんな菌がいたよ!
この菌にはどの抗菌薬が効くかなあ?
これはグラム陽性球菌だね!しかもブドウの房状に見える。
皮疹も見て『膿皮症』なら感染菌は「Staphylococcus pseudointermedius」の可能性が高い!よって、赤枠内で感受性率が高い抗菌薬が選択肢に上がるんだ。
一般的に、経験的投与の際は最低80%の感受性率があるものを選ぶ事が必要だよ!
また、膿皮症には治療ガイドラインが出ているから、この中で推奨度が高い薬剤も参考にすべきだね!
(犬表在性膿皮症治療ガイドライン:Andrew Hillier et al. Vet Dermatol 2014)
なるほど!感染部位とグラム染色の情報から、検出割合の高い菌を類推して経験的投与に役立てるんだね!よくわかったよ!
ケース2
今度は、膀胱炎でこんな菌が見られたよ!これは、、グラム陰性桿菌だね!
そうだね!アンチバイオグラムを見ると、尿路感染症でグラム陰性桿菌が出た時は、約40%検出されている大腸菌の可能性が非常に高いようだ。
そうすると、どの薬剤を選ぶのが適切かな?
表を見ると、アモキシシリンが高感受性だ!これは使いやすいね!
段々アンチバイオグラムの読み方に慣れてきたね!
しかし、ここで一つ注意点がある!尿路感染症では、多系統の抗菌薬に耐性を持つ“Pseudomonas aeruginosa”も少なからず検出されている。
もし感染しているのが緑膿菌なら、アモキシシリンは効かないんだ。
ほんとだ!感染菌を正確に特定できていないと、抗菌薬の選択を間違うリスクがあるんだね!
その通り。グラム染色像だけで細菌の種類まで特定するのはとても難しい。
アンチバイオグラムはとても有用なツールだけど、100%頼り切ってはいけないんだ。
経験的投与後には、症状の良化傾向があるかをきちんと確認し、可能であれば早期 に細菌検査を併用して、選択薬が適切であったかを確認することが望ましいよ。
ケース3
最後に学んでほしいのが、アンチバイオグラムを用いた、“院内の抗菌薬適正使用の評価”に ついてだ。院内解析データを全国サーベイランスと比較して、あるいは、院内の年次推移をみて 感受性率が低下している場合、抗菌薬適正使用や感染対策に問題がある可能性がある。
たしかに。言われてみると、僕の病院はニューキノロン系を多用するせいか、同系統の薬剤の 感受性率が全国と比べて低いみたいだ!
これからは、適切な症例に適切な抗菌薬を投与するよう意識しながら、院内の推移も見て 自分の病院の状況を反省するようにするよ。
素晴らしい!
君が抗菌薬を乱用すればすぐ耐性菌が出現し、未来の動物を救えなくなってしまう。
だが逆に、君が抗菌薬を適切に使おうと心がけていれば、アンチバイオグラムが手助けをしてくれるはずだ。だから、使い方に十分気をつけて、日々の診察に役立ててほしい。
『どうぶつの細菌検査』を累計50検体利用して頂いた動物病院へ、
無料で貴院オリジナルのアンチバイオグラムを解析して進呈しております。
初回の解析後も、年間30検体利用することで毎年継続してアンチバオグラムを進呈いたします。(毎年1月発行)
院内の耐性菌検出率が上がっていないか、年次推移を比較していくことで、貴院の抗菌薬適正使用の評価にぜひお役立てください。
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