Column
いつも弊社の細菌検査をご愛顧いただき誠にありがとうございます。
検査事業部の技術担当より、『こうすればもっと上手く細菌検査を活用出来る!』という情報を発信していきたいと思います。
第一回となる今回は、『より検出率の高いスワブやスピッツ管スクリュー管の選び方』について考えていきます。
実はお送りいただく検査資材によって、細菌の検出率に違いが生じる場合があります。
①【尿検査】スワブorスピッツ管スクリュー管、どっちがいいの?
②【検査全般】いろいろある!!スワブの種類について
上記について一つずつ解説します。
※(追記: 2022.12.17) スピッツ管で検体をお送りいいただく際は、弊社より提供しておりますスクリュータイプをご使用いただくようお願い申し上げます。(スクリュータイプでないと蓋の隙間から検体がもてれしまうことがあるため)
①【尿検査】スワブorスクリュー管、どっちがいいの?
尿の検体を送る際、輸送容器についてお悩みではありませんか?スワブとスクリュー管のどちらがより検査に適しているのか、目的別に決着を付けていきたいと思います。
尿細菌検査のガイドラインでは、尿を試験管(スクリュー管)にて採取し、『検体を冷蔵保管し、24時間以内に検査開始する(臨床微生物検査ハンドブック 第5版)』と紹介されています。しかし、検査室附属の病院が多く存在する医療業界はともかく、獣医療の現場で『24時間以内の検査開始』を実施するのは中々難しいですよね。
実は生き物の体液には細菌に有害なフリーラジカルやスーパーオキサイド、また発育阻害因子として知られる脂肪酸などが含まれます。スクリュー管で採取した場合、これらの細菌にとっての有害物質によって細菌が弱ってしまう場合があります。また細菌にとっての栄養成分にも限りがありますので、これも細菌が弱る原因となります。
したがって
目的が「菌種同定」および「感受性試験」の場合
は、培地成分及び有害物質吸着性能があるスワブの方が優れていると考えられます。
また、この場合はできるだけ『尿沈渣』を採取してください。尿沈渣は遠心分離することで得られます。Sysmexさんの2011年の論文によると、遠心の条件は1,400g × 10分(半径15cmの遠心器だと3,000rpm × 10分)が最低条件だそうです。※gとrpmの計算はトミー精工さんのHPにて計算することができます!ご参考までに。
(https://bio.tomys.co.jp/products/centrifuges/acceleration_simulator/index.php)
一方、
「細菌感染の確認」が目的(汚染尿ではなく細菌尿であることの確認)の場合
は培地成分が含まれてしまうと定量培養を行えません。本来は原因と特定できるだけの菌数がないにも関わらず、輸送中に菌数が増えてしまっては、本末転倒ですよね。ですので、この場合はスクリュー管の方が優れていると考えられます。またこの場合は遠心せずに採取した尿をそのままお送りください。ただし、細菌にとっての有害物質は依然として含まれますので、採材後速やかに輸送する必要があります。
スクリュー管輸送中の菌数変化が気になる方は、キャリアーでの輸送もご検討下さい(BDバキュテイナTM ユ−リン・コレクション・キット/ベクトン・ディッキンソンなど)。
②いろいろある!!スワブの種類について
次はスワブの種類について少し詳しく説明していきたいと思います。
スワブは培地成分の違いによって大きく二種類に分けられます。 (1) アミーズ(またはスチュアート)輸送培地を用いている咽頭(等)用 (2)キャリーブレア輸送培地を用いている糞便用
アミーズ輸送培地は栄養要求性の高い細菌にも対応しており、嫌気性菌の輸送にも適しています。
キャリーブレア輸送培地は腸内細菌科の細菌が過剰に増殖するのを防ぐため栄養成分の含有量が少なく、増殖抑制剤(リン酸塩)を含みます。どちらが優れているということはありませんが、弊社では幅広い細菌に対応できるアミーズ輸送培地を奨励しています。
また、アミーズ輸送培地でもチャコール入り(黒)タイプとチャコールなし(透明)タイプがあります。チャコール(活性炭)は細菌が弱体化する原因である有害物質を吸着してくれますので、チャコール入りを奨励します。
培地以外にも軸の違いによって使い分けることが可能です。スワブの軸にはプラスチックとアルミの2種類があり、アルミのほうが細軸となっています。耳や鼻の穴にはアルミ軸、膣や皮膚にはプラスチック軸の方が適していると考えられますので、必要に応じて使い分けて下さいね。
参考:臨床微生物検査ハンドブック 第5版/BD BBL カルチャースワブ