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2021.10.31

第三回:似たもの同士!!アンピシリンとアモキシシリン

本年の夏に弊細菌検査は大型アップデートを行いました。その中の一つに、アモキシシリン(AMPC)→アンピシリン(ABPC)への変更があります。

「アンピシリンよりアモキシシリンの方がよく使うのに…!!」と思った方も少なくないのではないでしょうか。

先に結論を申しますと、アンピシリンの感受性試験の結果をそのままアモキシシリンの結果として解釈することができます。

ということで、第三回は『アンピシリンとアモキシシリン』について考えていきます。

①アンピシリンとアモキシシリンとは

②感受性試験の解釈について

上記について一つずつ解説します。

①アンピシリンとアモキシシリンとは

アンピシリンとアモキシシリンはβラクタム系/ペニシリン系抗菌薬のうち、アミノペニシリンというグループに属する抗菌薬です。

アミノペニシリンは、最も古典的なペニシリンG(グラム陽性菌に有効)にアミノ基を付加することで、大腸菌などのグラム陰性菌にも有効となった抗菌薬です。(耐性菌の発生リスクが少ない薬剤ですので、抗菌薬投与が必要な場合は積極的に選択したい薬剤です。)

アンピシリンとアモキシシリンの抗菌スペクトルはほぼ同形で、感受性試験の結果も同様になります。

一方、両薬剤の違いは主に腸管吸収率にあります。アモキシシリンはアンピシリンにヒドロキシ基を付加することで、より腸管吸収率が高くなるように設計されています。ですから、経口薬としてアモキシシリン、注射薬としてアンピシリンが主に用いられるんですね。

参考:KEGG DRUG

②感受性試験の解釈について

上に記しました通り、アンピシリンとアモキシシリンの抗菌スペクトルはほぼ同形で、感受性試験の結果も同様になります。

細菌検査の国際基準(Clinical & Laboratory Standards Institute: CLSI)においては、主要な細菌種で「Results of ampicillin testing can be used to predict results for amoxicillin.(アンピシリンの薬剤感受性試験結果は、アモキシシリンの薬剤感受性を予測するのに使用可能である。)」と記載があり、アンピシリンの感受性試験の結果をそのままアモキシシリンの結果として解釈できることがわかります。

一方、アンピシリン→アモキシシリンの外挿は可能ですが、アモキシシリン→アンピシリンの外挿はできません。アンピシリンとアモキシシリンのいずれの感受性も知ることができるように、今回はアンピシリン(ABPC)のセット追加を行いました。

参考:CLSI M100 31st edition/ VET08 4th edition /感じる細菌学×抗菌薬 など