犬の表在性膿皮症(細菌性毛包炎)の診断・治療ガイドラインは、2014年にAntimicrobial Guidelines Working Group of the International Society for Companion Animal Infectious Diseasesによって発表されました(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/vde.12118)。
今回はこちらのガイドラインの概要と、私の皮膚科診療で注意している点を交えて犬の膿皮症の診断について解説します。
犬の膿皮症の診断は4つ工程からなります。
まずは表在性膿皮症に典型的な臨床症状をとらえることです。臨床的に多く遭遇しやすいパターンは、
になります。病変は背中、お腹に分布することが一般的で、来院する症例は多くの場合は複数箇所に病変を認めています。
毛孔に一致した丘疹や膿疱は肉眼的に見極めるのは難しい場合があります。ライト付きのルーペ、ダーモスコープを利用すると判別が容易です。
細胞診サンプルはできれば丘疹や膿疱といった新鮮な原発疹より行います。これらの発疹が存在し、そこから細菌感染像が細胞診で得られれば、膿皮症の可能性がかなり高くなります。
細胞診では、球菌の増殖、好中球浸潤および菌の貪食像を確認します。好中球は変性していて、核の過分葉や破砕像も見えます。
細胞診の染色はディフクイックなどの簡易染色が一般的に行われますが、グラム染色も並行して行うようにしましょう。
簡易染色で検出された球菌がグラム陽性球菌であれば、犬の表在性膿皮症の主要な起因菌であるブドウ球菌(特にS. pseudintermedius)と予想できる
鑑別の上で最も重要となるものは、その他の毛包感染症です。特に毛包虫症と皮膚糸状菌症は徹底的に鑑別しましょう。これらの鑑別は毛鏡検、皮膚掻爬物直接鏡検、ウッド灯検査、真菌培養検査で行えます。
イソオキサゾリン系駆虫薬を定期的に外部寄生虫予防で使用している場合は、毛包虫症に罹患している可能性は低いでしょう。また、その他の動物(特に猫)や土と接触することのない症例は皮膚糸状菌の可能性は低いと考えます。生活環境や予防状況も合わせて確認しましょう。
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