ガイドラインでは、以下の5つの状況で細菌培養検査を推奨しています。
細菌培養検査・薬剤感受性検査は必ずしも初診時に必須ではなく、先行して抗菌療法を行い、その結果によって判断するといった工程でも間違いではないと言えます。皮膚科診療では、近年の薬剤耐性ブドウ球菌の蔓延状況を鑑み、可能な限り初診時に細菌培養検査の実施が推奨されます。
犬の膿皮症の主な起因菌であるS. pseuidntermediusの同定には、PCR法などが必要です。同定を誤った方法で行ってしまうと、正確な薬剤感受性試験ができません。ヒトの検査機関では、S. pseuidntermediusを誤同定されるリスクがあります。また、小動物医療領域で利用可能なクイック感受性検査は、菌種を同定しないため、全く意味のない(感受性検査ができるわけがない)検査ですので注意しましょう。
症例に使用する可能性がある、病院に取り揃えている抗菌薬を調べてもらえる期間が良いでしょう。
近年、国内で猛威を振るっている耐性菌はメチシリン耐性S. pseuidntermediusは、すべてのβ-ラクタム系抗菌薬に低親和性です。メチシリン耐性ブドウ球菌に盲目的に抗菌薬を使うのは極めて危険なため、しっかりと事前に調査しておきましょう。
ブドウ球菌のメチシリン耐性はオキサシリンディスク感受性試験が汎用されます。メチシリン耐性が推測された場合は、たとえ感受性検査で他のβラクタム系抗菌薬が感受性と判定されても、使用すべきではありません。
犬の副腎皮質亢進症の診断をするためにコルチゾール値を測定するかと思いますが、低値、正常、グレーゾーン、高値の基準が存在します。実際に測定された値を臨床医が判断し、治療法を調整するかと思います。実は、細菌の薬剤感受性試験も同じなのです。
薬剤感受性試験には感受性・耐性の判定基準が存在し、その基準よりどの程度の差があるかによって感受性や耐性の程度を推測できます。例えばS. pseuidntermediusのセファレキシンのディスク拡散法で感受性である基準は阻止円が18 mmですが、18 mmギリギリの阻止円が形成された菌よりも 25 mmの阻止円が形成された菌の方が、セファレキシンが効果を示す可能性が高いと言えます。
感受性と判定されたのに、イマイチ抗菌薬が効かない症例がいる理由の一つにはこのような背景があります。したがって、ただ単に感受性、中間、耐性のみの結果が返ってくる検査機関では抗菌薬の選択は困難です。
感受性検査の判定基準と測定値を開示する検査機関を選択することが極めて抗菌薬選択において重要となります。これは皮膚のみに限らず、その他の臓器のブドウ球菌以外の細菌感染症でも同じことです。
犬の表在性膿皮症の管理のためには、先行疾患を同定・管理することが重要です。2018年に報告された犬の再発性膿皮症の先行疾患の解析で(Seckerdieck F, et al, Vet Rec, 2018)、最も高率に認められるのは犬アトピー性皮膚炎や皮膚食物有害反応です(64%)。
また、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症をはじめとした内分泌疾患が17%で認められています。若齢時より膿皮症を認め、かゆみが強い場合はアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの可能性を追求します。かゆみが表在性膿皮症に起因しているか、あるいはアレルギー性疾患に起因しているかの鑑別が重要です。
表在性膿皮症への適切な抗菌療法をおこなった後に、膿皮症の発疹が消失するもののかゆみが残る症例はアレルギー性疾患が背景にある可能性が高くなります。一方、中高齢から膿皮症を発症した症例で、活動性、食欲、体重、脈拍、飲水量、尿量、便性状などの変動がある場合は、スクリーニング検査(血液、尿、糞便、画像、内分泌検査など)を積極的に実施しましょう。
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