昨年の夏に弊細菌検査は大型アップデートを行いました。その中の一つに、ブドウ球菌・連鎖球菌の『Dテスト』があります。
「そんなテストやってたの!?」という方も、この記事を読んで『Dテスト』の概要を知り、結果を使いこなしていきましょう♪
目次は以下の通りです。
①優しい抗菌薬クリンダマイシン
②他人の空似!?エリスロマイシン
③隠れクリンダマイシン耐性について
LINEの問題の答えは↑の通り②クリンダマイシン×エリスロマイシンです😁正解できましたか?
①優しい抗菌薬クリンダマイシン
グラム陽性菌の治療薬と言えばペニシリン系抗菌薬が一般的ですが、ペニシリンは全抗菌薬の中でアレルギーを起こしやすい性質があります。
「公衆衛生的に強い薬は用いたくないが、ペニシリンは使えない…」といった場合に、クリンダマイシン(リンコマイシン系)は使用されます。環境にも患者さんにも優しい抗菌薬なんですね。
〜クリンダマイシンの作用機序〜
生き物がタンパク質を合成するための装置’リボソーム’は鏡餅のような形をしています。(動物など)真核生物のリボソームと細菌のリボソームは種類が異なりますので、細菌のリボソームだけを標的にした抗菌薬の開発が行われており、その一つがクリンダマイシンとなります。
クリンダマイシンは細菌のリボソームの上の餅(50Sサブユニットといいます)に結合することで、リボソームがタンパク質合成するのを防ぎ、静菌作用を示します。
②他人の空似!?エリスロマイシン
クリンダマイシンと似た抗菌薬としてエリスロマイシン(マクロライド系)があります。エリスロマイシンもペニシリンアレルギーの患者さんの治療に使われる抗菌薬で、細菌のリボソーム50Sサブユニットに作用します。抗菌スペクトルもグラム陽性菌中心でクリンダマイシンと似ていますが、腸球菌や嫌気性菌等への効果で違いがあります。
お互いそっくりさんなクリンダマイシンとエリスロマイシンですが、似ているが故に同時に使うとケンカしてしまい、効果が弱まってしまいます。このため、併用することはできません。
③隠れクリンダマイシン耐性株について
近年クリンダマイシンに関して、感受性試験では感受性(S)と出るのに、臨床では効果が見られない症例が頻発しました(’隠れクリンダマイシン耐性株’といった感じですね)。
これを見つけるためのテストが、今回の『Dテスト』です。クリンダマイシンとエリスロマイシンの薬剤ディスクを並べて置くと効果を弱め合うため、’隠れクリンダマイシン耐性株’ではアルファベットの『D』型に阻止円が形成されます。
感受性試験の段階で耐性かどうかが分かれば、患者さんの負担軽減・早期治療に繋がります。このため、弊検査では『Dテスト』を開始しました🍀
※Dテストは’隠れクリンダマイシン耐性株’が出現する可能性があるブドウ球菌とレンサ球菌が対象です。
〜もう少しだけ詳しいお話〜
エリスロマイシン(マクロライド系)が普及するとエリスロマイシン耐性菌が出現しました。エリスロマイシン耐性には、①リボソーム50Sサブユニットのメチル化と②排出ポンプによるマクロライド系の排出の2パターンがあります。
①リボソーム50Sサブユニットのメチル化は、作用機序が類似するクリンダマイシンも効きづらくなりますが、これが上記の’隠れクリンダマイシン耐性株’の要因でした。
なんだかクリンダマイシン耐性はエリスロマイシン耐性のとばっちり感がありますね(笑)
参考:佐野 加代子, et al., 2013, 臨床微生物:23(1),12─19, 微量液体希釈法によるStaphylococcus属菌のClindamycin誘導耐性検出の比較検討、など
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