お陰様でこの記事も14回目となりました(中途半端🤣)。薬剤耐性菌についての知識が増えると、だんだんと以下のような気持ちになってきませんか?
「薬剤耐性菌が多すぎる…!!」「ぶっちゃけ全部が薬剤耐性菌なんじゃない!?」
お気持ち分かります…!!感受性試験の結果には抗菌薬がずらり。抗菌薬の種類が多いのだから、耐性の種類も多いのです…!!
薬剤耐性菌はとても数が多いので、全てに注意する。これが理想です。
でも、メリハリも大事ですよね。
ということで今回から3回に渡って、特に注意が必要な薬剤耐性菌について説明していきます。世界保険機構(WHO)が2017に公表した「新規抗菌薬が緊急に必要な薬剤耐性菌」を参考に、危険度「中」「高」「鬼」に分けて解説しますよ♪
今回は危険度「中」の細菌3種について。該当する菌種は以下の通りです。
①ペニシリン非感受性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)
②アンピシリン耐性インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)
③フルオロキノロン耐性赤痢菌(Shigella)
①ペニシリン非感受性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)
「ペニシリン耐性?大したことないな」と思ったそこのあなた!!認識を改めてください。ペニシリンは呼吸器への組織移行性が高く、細菌性呼吸器感染症ならペニシリン系一択(ヒトの場合)といった背景があるのです(本当ならマクロライド系も有効なのですが、日本では耐性化が進んでおり、あまり推奨されません)。またセファロスポリン系にも耐性を示す株が増えており、これ以上耐性をつけさせないことが重要です。
本耐性菌の治療は、呼吸器感染症なら大量のペニシリン投与で対応します。一方、髄膜炎の場合はMICにもよりますが別の抗菌薬を検討したほうが良いでしょう(ヒトの場合)。伴侶動物においても治療方針はほとんど変わりがありませんので、本菌には十分ご注意ください。
②アンピシリン耐性インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)
インフルエンザ菌も①と同じ理由(呼吸器)で注意が必用です。本耐性菌は耐性のパターンによって治療薬を検討し直さなければなりません(ヒトの場合)。
・βラクタマーゼ産生アンピシリン耐性…アモキシシリンクラブラン酸やアンピシリンスルバクタムが有効
・βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性…ピペラシリン, 第三世代セフェム, カルバペネム, キノロンが有効
・βラクタマーゼ産生アモキシシリンクラブラン酸耐性…ピペラシリンタゾバクタム, 第三世代セフェム, カルバペネム, キノロンが有効
伴侶動物においても上記の傾向に注意し、治療にあたってください。感受性検査を実施し、有効かつ耐性を広げない抗菌薬の選択をお願いします。
③フルオロキノロン耐性赤痢菌(Shigella)※弊社では糞便検査は実施しておりません
赤痢菌(シゲラ)の治療にはキノロンないしホスホマイシンが用いられます(ヒトの場合)。生命に関わるので強めの抗菌薬を用いるんですね。しかし、キノロン耐性は以前の記事でもご説明した通り獲得しやすいため、耐性化が進んでしまっています。
獣医療における赤痢菌の治療もまずはキノロンないしホスホマイシンを考え、感受性検査の結果を見ながら有効な抗菌薬を選んでいくことが重要です。またこういった命に関わる感染症で選択肢となるような強い抗菌薬は、耐性をつけさせないように普段から使用を控えることが大切です。
ここまで、特に危険な薬剤耐性菌① 〜危険度「中」〜をお届けしました!次回は〜危険度「高」〜をお届けします。お楽しみに♪
参考文献
・染方史郎, 感じる細菌学×抗菌薬
・AnswersNews, WHOが初公表した「新規抗菌薬が緊急に必要な薬剤耐性菌」リスト―開発支援 世界で動き
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